いきなりですがストレスの概念は実は
曖昧です!
なぜ曖昧かというと「ストレス」という<そのもの>は存在しないからです。
例えば人前で話すのが苦手な人にとってそれが「ストレス」になりますが
目立ちたがり屋の人であれば「ストレス」とは言えません。
このように人によっても、捉え方によっても、環境によっても左右される・・・
確かに「ストレス」は毎日感じていても、つかみどころのない存在です。
正体のよくわからないままでは、上手に対処できません。
- この記事では
- 「ストレス」がどのように研究されてきたか?
- 「ストレス」が加ると私たちの体にどのような変化が生まれるか?
- が理解できるように解説しています。
ストレスはどのように研究されてきたの?
「ストレス」の言葉の語源は物理学にあります。
歪みという意味の「ストレイン」に由来しています。
「ストレス」という言葉を最初に使ったのがアメリカの生理学者である
ウォルター・キャノン(Canon,WB)です。
彼はホメオスタシス(生体恒常性)の考え方を提唱した人で、
それを外部から乱す刺激のことを「ストレス」と呼びました。
ストレス研究の父と言われるのがハンス・セリエ(Selye,H)です。
セリエはハンガリー出身のカナダの生理学者です。
セリエ:「あれ、病気は違うのに、誰もが同じような体の不調を示しているぞ・・・」
という非特異的反応を見つけました。
そして1936年に科学誌「ネイチャー」にストレス学説を発表しました。
その中でストレス反応は視床下部ー下垂体ー副腎皮質系が担っていることを提唱したのです。
セリエ:ストレスは「急性刺激により生体が打撃を受けた時の非特異的反応」やで。
ほんでそれを引き起こす外部からの刺激のことを
「ストレッサー(ストレス要因)」と呼ぼう。
セリエは人間が外部からいろんな種類の刺激があっても
それに同じように働いて適応しようとする人間の「カラクリ」を明らかにしたのです。
その後ストレスの研究が続けられました。
1967年にアメリカのワシントン大学のホームズ(Homes,T .H .)とレイ(Rahe ,R.H.)
が社会的最適応尺度を発表しました。
これは心理社会的ストレスを客観的に評価しようとする試みです。
ホームズとレイ:「生活環境の変化、つまりライフイベントが心理社会的ストレス要因になってんのちゃうか?」と考えたわけです。
結婚によるストレスを50点として、それぞれ配分されています。
これをLCU値(Life Change Unit value)を定め、過去1年間に経験した合計で疾患の発症を予測しようとしたのでした。
う〜ん配偶者が元気で、仲良くいること。とっても大切なんですね・・・
クリスマスもストレスになるんですね・・・
引用:夏目誠ら(1993)「ライフイベント法とストレス度測定」
1980年代になるとラザルスがデイリーハッスルズスケールを提唱します。
ラザルス:「ライフイベントよりも日常の些細なイライラの方がストレスに影響するで!」
と考えました。
デイリーハッスルズとは日常生活における些細な苛立ちごとのことで
「忘れ物」「タバコの吸いすぎ」「睡眠不足」などです。
反対に気持ちを安定させたり高めたりする要素を評価する
アップリフツスケールも開発しています。
アップリフツの例には「友達を作る」「くつろいでいる」などがあります。
ラザルス:「ストレスは出来事をどのように認知するかで変わるから個人差があるねん」
ラザルス:「それにどう対処するかストレス対処行動によって変わってくるはずや」
彼の主張によってストレスに上手に乗り切る方法やソーシャルサポート(社会支援)によって
ストレス反応をコントロールできるという発想が生まれることになりました。
1960年代からは仕事で生じるストレスの研究が盛んになりました。
職業性ストレスの代表的なモデルには下記のようなものがあります
・カラセック 仕事の要求度ーコントロールモデル
・ジョンソンとホール 仕事の要求度ーコントロールサポートモデル
・ハレルとマクレイニー NIOSH職業性ストレスモデル
・シーグリスト 努力ー報酬不均衡モデル
近年ではストレスのポジティブな面を考えようとする研究も注目されてきています。
・シャウフェリ ワークエンゲイジメント
確かに仕事はやりがいを感じますけど、ストレスで参っちゃうことありますよね。
このように見ていくと「ストレス」とは何かが少し見えてくるのではないでしょうか?
- 「ストレス」は人間が環境の変化に対応して、生き抜くための体の反応のこと
ストレスを感じた時の身体の変化
私たちが「ストレス」を感じた具体的に私たちの体の中にはどのような変化が起きているのでしょう?
ストレスの生化学的(生命を化学的に解釈する)な解釈を紹介します
ストレス反応には大きく2つの経路が存在すると言われています。
一つ目はHPA系です。
HPA系とは脳の視床下部から下垂体そして副腎系に至る回路です。
大脳皮質:「あ、あかん・・・えらいこっちゃ!」
視床下部:「一大事でっか?大脳皮質はん・・・?」
「よっしゃ副腎皮質刺激ホルモン放出因子<CRF>で脳下垂体に連絡や」
脳下垂体:「わかりました。私から副腎皮質刺激ホルモン<ACTH>で副腎皮質に指令を出します」
副腎皮質:「キタキタ!コルチゾール放出や!いくでぇ〜」
このように伝言ゲームのように順番に連絡がいきコルチゾールの反応が体に現れます。
・血圧上昇
・心拍数増加
・血糖上昇
・脂肪部内促進
そもそもストレスは人間が生きていくために有益なもので
体のパフォーマンスを高めて危機に対処するために体の反応です。
しかし過剰なストレスでコルチゾールの分泌が続くと体に下記の悪影響が現れます。
・脂質の蓄積
・内臓型肥満
・血中コレステロールの増加
・海馬の萎縮
・免疫力の低下
もう一つの経路がSAM系です
SAM系とは視床下部から交感神経を通じて副腎髄質に伝わる回路です。
闘争ー逃走反応を担当してくれています。
大脳皮質:「うぁぁぁ、敵の襲来でぇ〜」
視床下部:「よっしゃ、交感神経を使って連絡や。プルル・・・」
副腎髄質:「アドレナリン、ノルアドレナリン放出しまーす!」
交感神経:「ノルアドレナリン放出しまーす」
心臓:「心臓をドキドキさせて血を送りまーす」
血管:「血管の筋肉を引き締めまーす。血圧上がりまーす」
体:「よっしゃ、体動かす段取りが整ったで。で、敵はどこや?戦う?逃げよか?」
このように心臓がドキドキして身体中に血液がめぐり、素早く動ける準備をしてくれるおかげで
敵と戦ったり、もしくは逃げたりできます。
HPA系より素早い体の反応と言われており、アドレナリンやノルアドレナリンは1〜3分で半分程度まで代謝されてしまいます。
このような体の反応からわかることがあります。それは・・・
- 「ストレス」は人間の体の「エンジンの回転数」を上げるための反応
- “エンジン”を回しすぎるとオーバーヒートして壊れちゃうので注意!
まとめ
いかがだったでしょうか?
以上のことから
- 「ストレス」そのものは人間が生きていくために必要な体の反応
- 「ストレス」は上手に活用して、調節していくことが大切
ということがわかります。
昔は冷えや飢えといった体にかかるストレスが多かったのですが
それらは解消されてきています。
その代わりに人間関係や精神的な集中が必要な仕事のストレスに適応していくことが
私たちの課題になってきているのです。
ストレスの正体に関心を持って、対処法を学んでいくことが
ストレス社会と言われる時代を生き抜くために、ますます必要になってきますね!
一度しかない人生、ますますQOL高めていきましょう!
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